勝手にアラカルトレヴュー

【読書】と【映画】のブログ

三木谷浩史『楽天流』

三木谷浩史の本を初めて読みました。
その本の名は、楽天流。

1955年30歳のとき、彼は日本興業銀行を辞めて、たったふたりで会社を初めました。
まだ、いい大学を卒業して一流企業に就職して一生をそこに捧げるのが当然だった時代に、それはかなりの冒険だったことでしょう。

しかし、この本を読み進めるうち、それこそが実に三木谷さんらしいことなのだとわかってきました。
そもそも、辞めようと思ったきっかけが阪神・淡路大震災で、人の命のはかなさを痛感し、一度きりの人生を思い切り生きなければならない。いつかではなく、今すぐにやりたいことをすべきなのだ。
と、思ったからだというのだから、
とにかくスケールの大きな人なのでしょう。

アメリカの通販会社を買収して、インターネットによるショッピングモール・楽天市場を開き、会社をどんどん大きくしてきた合理的な考え方や、批判をものともせず社内公用語を英語に決めた事などを見ると、かなり独裁者的なイメージが浮かんでしまうのですが、どうやらもっと温かみのある人のようです。

そして、なんと言っても、楽天市場に対する熱い思いが半端でないのです。
安くて速く提供する大手通販に立ち向かうため、楽天はモノを売り買いするだけではなく、売る人と買う人の心をつなぐ場を提供することに努めているそうです。

たとえば、すごーく美味しいけど、値段だけでは競争力のない上質なお米の生産者がいたら、SNSTwitterInstagram等に簡単にアクセスできるシステムを提供し、
そのお米について、
作り方がどう違うのか、
味がどう素晴らしいのか、
そのお米と他のお米とはどこがどう違うのか、
等を、映像や言葉を駆使して、発信してもらい、
また、生産者と買い手が直接質問をしたり、話したりできるような場も提供し、その過程を楽天担当者がお手伝いするというのです。
そして、それによって買い手には、心からそのよさを実感して、美味しいお米を買ってもらうことができるのだとか。

三木谷さんは、そういう心の通った取引こそが楽天の目指すところだと豪語するのです。

彼によれば、e-commerceは、エレクトリックcommerceではなくて、エンターテイメントcommerceでなくてはならないのだとか。

スーパーみたいに手軽じゃなくても、
今日のオススメや、作り方まで教えてくれたり、その日の料理に合わせてさばいてくれる地元のお魚屋さんの方が、買い物が楽しい!みたいな、そんな通販を目指しているそうなのです。

この本を読むまで、ネット販売なんてみな同じようなものだと、考えてていた私にとって、これはちょっとしたカルチャーショックでした。


社員に対しても、出店者に対しても、 エンパワーメント(自律自走できるように支援する)の考えを軸に友好関係を築いていくやり方は実に興味深いです。

他にもいろいろあるのですが、もうひとつ印象的だったのは、とにかく少しずつ毎日改善していくことの重要性を書いたくだりです。
複利計算によるものと思われますが、0.1%の改善が年間で44%の成長に繋がる。と、書かれていました。
まあ、数値はともかく、たくさんは無理でも0.1%ぐらいなら、自分たちも改善できそうな気がしてきますよね。


それから、最後に触れたいのは、こんな仕事一筋的な人なのに、経営の立ち行かなくて困っているスポーツやら文化事業やらを、次々と受け止めてしまう三木谷さんの人柄です。

Jリーグヴィッセル神戸オーナー、東北楽天ゴールデンイーグルスオーナー、東京フィルハーモニー交響楽団理事もなさっているそうで、それ以外にもさまざまなチャリティー事業を行っているようです。

そして、

経営者たちは、社会やコミュニティーに、金銭以上のものを還元するべきだと主張しておられます。

本当に素晴らしいことだと思いました。

そこで、これは私の完全な私見なのですが、三木谷さんには、事業だけではなくて、日本国の政治をやっていただけないものか!?と、強く思った次第です。

三木谷さんとか孫さんとか、それなりの事業を抱えている人はハートが全く違うように思えます。

この国に、いわゆる政治屋ではない、ヤル気満々の政治家がいてくれたら、どんなに心強いことでしょう。
と、ついぼやいてしまう今日この頃です。


楽天流

楽天流