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吉村昭『漂流』

時は江戸。これこそ、本物のサバイバルゲームだ。

一気に読める名作でもある。


『漂流』は、1975年に『サンケイ新聞』で連載された、 吉村昭の長編小説。加筆訂正後に、単行本として刊行された。
史実に基づき、淡々と、かつ滑らかに語る吉村昭の文章が秀逸で、つい一気に読んでしまう。

主人公は、土佐の船乗り・長平。
江戸中期、今から250年位も前のこと。酷い嵐に合い船が難破、命からがらたどり着いたのは、伊豆諸島の離れ小島の無人島だった。

泉もない。川もない。ろくな木もなく、果実もない。動物もいない。いるのは、大きなアホウドリぐらい。
火もない。道具もない。
当たり前だが無線もないし、生きてることを誰かに伝える手段すらない。

漂着した船乗り四人は失望したが、生きていくために必死だった。
アホウドリをつぶして、食料にした。
アホウドリの大きな卵で栄養をとり、その殻に雨水を貯めて飲み水とした。
貴重な食料・アホウドリが、渡り鳥だと気づいたときには落胆したが、鳥の干物作りに思い至る。
アホウドリの羽で簑を作り、寒さをしのいだ。

これは、まさに、命をかけた本物のサバイバルゲームだ。

仲間達が体調を崩し、故郷を思いながら死んでしまうと、長平はついにひとりぼっち。
過酷な孤独との闘いだった。

数年後に漂着した船乗り達と、何年もかけて流木を集め、錨から釘を作り、つぎはぎだらけの船を仕立てて、12年ぶりに故郷へ帰還する。
にわかには信じ難いが、これが、事実に基づいて書かれた小説なのだから、本当に凄すぎる。


漂流 (新潮文庫)

漂流 (新潮文庫)

  • 作者:昭, 吉村
  • 発売日: 1980/11/27
  • メディア: 文庫