【読書】木村 壽男『研究開発は成長戦略エンジン』by 兄

この本はいわゆる技術経営(management of technology)に関連した内容だが、著者のユニークな切り口が随所にみられる良書と感じた。

著者は、一貫して「スタティックR&D(Static R&D)」から「ダイナミックR&D(Dinamic R&D)」への転換を強調している。

R&Dとは、research & developmentの略であり、日本語訳すると研究開発のことである。

スタティックR&Dとは、戦略提案がなく受動的で内部志向の研究開発のこと。

一方、ダイナミックR&Dとは、研究開発が企業の成長戦略エンジンとなっている状態と定義している。
動きがあり、活性化していて、成果を生み出す研究開発のことだ。

ダイナミックR&Dとなっていくには、「R&D生産性」と「R&D活力」を同時革新しながら、マネジメントする必要がある。

「R&D生産性」とは、研究開発成果を測る指標だ。
生産性=売上額÷投資額。
本書では、直接経営貢献成果(新製品・新事業創出額等)だけではなく、間接経営貢献成果(特許、論文、学会発表等)にも目を向けているのが興味深い。

「R&D活力」とは、将来の生産性を決める組織能力の指標だ。
式で表わすと、活力=能力×活性化度合、となる。
著者が作成したR&D活力アンケート診断票を使用して見える化する。
アンケート内容は、1 研究開発戦略、2 テーマ創造力、3 事業化プロセス力、4 オープンイノベーション、5 技術力、6 R&D人材力、7 革新的組織風土、と多岐に渡っており、これらがダイナミックR&Dの必要要件でもある。

経営学者のドラッカー氏は、「測れないものは、マネジメントできない」と指摘している。

著者が提唱した「R&D生産性」と「R&D活力」の2つの指標は、どちらも数値化できるように工夫されている。

さて、冒頭でダイナミックR&Dとは、研究開発が企業の成長戦略エンジンとなっている状態と定義している。
よくあるパターンは、経営企画や事業企画が成長戦略を策定し、その後R&Dが研究開発戦略を立てるパターンだ。
著者は、未来の情報や知恵を一番持っている研究開発メンバーが成長戦略を策定していくことが重要だとしている。
つまり、成長戦略のど真ん中に研究開発戦略があるイメージだ。

ダイナミックR&Dにとって、成長戦略の構想と実現は、重要な使命である。

研究開発主導での成長戦略の創り方の流れは、以下の通り。詳細は、書籍の第2章(研究開発が成長戦略を考え提言するの章)を参照していただきたい。

①事業ビジョン仮説づくり
②未来志向の技術の棚卸し・評価
③事業展開仮説の検討
④技術を核とした新製品・新事業テーマの創出
⑤事業戦略
⑥技術戦略構想
⑦事業展開シナリオと技術開発ロードマップ
⑧新製品・仮想カタログづくり
⑨未来技術・仮想カタログづくり
⑩新製品コンセプトシート
⑪中長期・技術開発計画

次に、上記の流れで策定した成長戦略の実現に向けてR&D戦略を作成する必要がある。
詳細は書籍の第3章(テーマ創造力を高めるの章)を参照していただきたい。

また第4章(事業化プロセスを再構築するの章)では、
設定した研究開発テーマの評価方法が紹介されており、興味深かった。
未来価値を重視した新たな評価手法であるFVE法(future value evaluation)。

以上、簡単ではあるが、ダイナミックR&Dのエッセンスをまとめた。

ダイナミックR&Dは、現代において、どこの会社にも必要な概念のように思う。

最後に、目次の章部分を抜粋して、記述する。

【目次】

第1章 新たな研究開発マネジメントとは ~「生産性」と「活力」の同時追求

第2章 研究開発が成長戦略を考え提言する ~成長戦略と研究開発戦略の融合

第3章 テーマ創造力を高める ~個人の創造性を組織的に結集する

第4章 事業化プロセスを再構築する ~事業化スピードと成功確率を高める

第5章 オープンイノベーション ~外部の知の活用

第6章 技術の未来価値を高める

第7章 事業創造リーダーづくり ~次世代のR&Dを主導する人材の養成

第8章 革新的組織風土づくり ~絶え間ないイノベーションを起こす組織へ


研究開発は成長戦略エンジン―Static R&DからDynamic R&Dへ

研究開発は成長戦略エンジン―Static R&DからDynamic R&Dへ