【読書】高山一実『トラペジウム』

トラペジウム(trapezium)とは、オリオン星雲の中にある四つの重星。比較的若い星による星団で、非常に高温で強い紫外線を放ち、星雲全体を光らせているらしい。


「初めてアイドルを見た時思ったの。人間って光るんだって。」

それ以来、どうしてもアイドルになりたい主人公、東ゆう。
オーディションに落ちまくっても諦められず、東西南北から、素敵な女子高生を一人ずつ集めることで、話題性によりアイドルを目指そうと画策するストーリー。

アイドルになるためなら、なりふりかまわず、かなり強引な上州東高の東ちゃん。
南テネリタス女学院からは、お蝶夫人みたいに優雅な華鳥蘭子。
西テクノ工専からは、ロボコンで話題の超絶美少女大河くるみ。
北高からは、今は訳あって馬場ハウスに通いながら、そこでのボランティアに力を注ぐ美少女亀井美嘉。
四つの星のようなキラキラな女の子達が、シンジ君というカメラと星好きの高校生の協力もあり、東ちゃんを中心に集結したのだ。

この辺りは、駆け足すぎてちょっと残念な気もしたが、好印象作りのために参加したボランティア活動あたりからは、じっくり書かれていて、楽しめた。
女子高生ならではのきつめのトークも面白く、とにかくとても読みやすい。


それにしても、あんまりトントン拍子にアイドルへの道が拓けて、話がうますぎ!?
と、思っていたら、内部から大きなどんでん返し。

元々、人前に出るのが苦手なくるみちゃん、苛められて苦労した分ふつうの幸せを望む美嘉ちゃん、ボランティア活動に目覚めたお蝶夫人が目指す先は、アイドルじゃない。
だから、それぞれの決断の時が訪れるのは当然のことだったのだろう。
そこから、東ちゃんは改めてひとりでアイドルの道を目指すことになる。


トラペジウムのラテン語の意味は、不等辺四辺形。どの二つの辺も平行でない四角形のことだそうだ。

友人として繋がりながらも、それぞれ違った道を選び進んでいく後半の四人には、こちらの意味のほうがしっくりくる。

まさに四人は、ひとつひとつ違う方向を見据えて輝く四つの星なのではないだろうか。


ほしぞら写真展~工藤真司~
代官山の個展で久しぶりに出会った四人。いや五人。

展示の中に、シンジが撮ってくれた8年前の四人の写真があった。そこには、アイドルになりたくてしかたなかった東ちゃんがチープな衣装で笑っていた。


「初めて見た時から、光っていました。」
シンジが東ちゃんにやっと伝えた、ラストのこの言葉が、とても素敵で印象的だった。


トラペジウム

トラペジウム