【読書】朝井リョウ『武道館』

 主人公は、まだブレイク前のアイドルグループ「NEXT YOU」のメンバー達。席替えをして隣に座った女の子というコンセプトのアイドルだ。

 杏佳、あおい、るりか、波奈、真由、愛子の6人で、スタートしたグループだが、一周年を過ぎたばかりのころ、センターの杏佳が卒業を決めた。

 デビュー当時、この杏佳が、《武道館でコンサートをしたい! 》と、言ったことから、かなり話題にされたグループでもある。

 その杏佳が、演技をもっとやりたいから卒業したいと話すのを聞き、初めてそのことを知ったメンバー達が驚き、涙する姿。

 NEXT YOU 公式サイトのそんな映像描写から話は始まる。

 なんちゃって制服を着る彼女達の会話や、授業参観と呼ばれるステージ上の彼女達の姿を写し出すカメラ。そして、それを見るネクス中毒と言われるファン達。

 新しいCDの中には、席替えと呼ばれるファンとの握手会のチケットが封入されている。

 まさにあの手この手で、ファンのこころを掴もうと、周りの大人たちも必死に見える。

 その中でも中心的に描かれているのは、幼い頃から歌と踊りが大好きで、だからアイドルになった愛子である。

 自分の姿を見て喜んでほしくて、歌もダンスも頑張って上手になっていったし、愛子押しの「サムライ」と呼ばれるコアなファンまでできていた。

 しかし、アイドルは、夢を売る仕事だから、人間らしいところを見せてはいけない。

 アイドルが、アニメ好きとしてテレビに出れば炎上し、演技の仕事をすれば批難され、勿論、恋愛なんてもってのほか。

 人々は、アイドルにいったい何を求めているのだろうか?

 そんな中で、愛子は本当に自分が求めていたものとの違いを感じ始め、やがて自分にふさわしい選択をすることとなる。

 小説で描かれるアイドルの実態についてはデフォルメもあるだろう。しかし、元乃木坂46橋本奈々未さんがオススメしてるということは真実もあるのだろう。


武道館 (文春文庫)

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