【読書】つんく♂『だから、生きる。』

 つんく♂が、喉頭癌で声帯を摘出する。

 このニュースを耳にしたときの驚きは、今でも覚えている。
 なんと言っても、あの張りがある甘い歌声とハロプロのプロデュースで、歌謡界を牽引していた最中のこと。
 むしろ、驚かないほうが不思議だろう。


 この本は、自らがプロデュースした近畿大学の入学式で、声帯摘出を公表したところから始まり、時を遡っていく。

 忙しい毎日の中で、喉の不調を感じながらも、その兆候を見逃してしまったこと。
 自分の感覚を信じず、治療が手遅れになってしまったこと。

 奥さんとの奇跡的な出会いと子どもたちとの幸せな暮らし。

 そして、声帯全摘手術。

 一般人の自分の立場で思い馳せても、大変なことなのに、音楽を生業としているつんく♂が、どんな思いで手術に臨んだことか。

 しかし、つんく♂は、

 自分が歩いてきた道に、後悔が一つもないと言ったら嘘になる。

 と言いつつも、

 この世の中のいろんな場所に、心癒される素敵な出会いがたくさんあることを癌になって知った。と感謝し、

 守るべき者がいるーーーこれはこの世の中で何よりも幸せなことなのではないか

 と語る。そして、

「僕は妻を愛している。子供たちを愛している。だから、生きる。」

 と、言いきっている。

 この力強い言葉に、癌を克服してから一回り大きくなって、格好よくなったと感じるのは私だけだろうか。


「だから、生きる。」 (新潮文庫)

「だから、生きる。」 (新潮文庫)