【読書】村田沙耶香『ギンイロノウタ』

『ギンイロノウタ』には「ひかりのあしおと」と「ギンイロノウタ」の2編が納められている。

「ひかりのあしおと」は、小学二年生のとき、〈ピンク色の布地に包まれた怪人〉にトイレに閉じ込めらた主人公・誉が、大学生になった今でも、人型の光に囚われるという強迫観念に苦しみ、友人達とうまく付き合えず、気持ち悪がられているストーリー。なぜかいつもすぐに恋人ができる主人公だが、そのレンアイすらも、狂気に満ちていて救いとは程遠い。



「ギンイロノウタ」は、生まれた時から内気で、誰をもイライラさせてしまうような主人公・有里が、人気アニメの「魔法使いパールちゃん」にのめり込み、魔法のステッキの代わりに銀色の指示棒を振り続けるストーリー。

 暗い押し入れの下段に隠れ、魔法がいつかできるようになると夢想しながら、指示棒だけを拠り所とする。
 きっとできる、大人になれば。
 きっと愛される、大人の女になれば。
 早く、早く大人になりたい。
 その夢を否定された瞬間から、どんどんひずみ、歪んでいく主人公の心と、それにつれて生まれる殺意のおどろおどろしさ。


 この二作品は、どちらも生々しくて毒がある。とにかく容赦がなく恐ろしい。

 題名からして、もう少し癒される話かと思って読みはじめたが、とんでもない。それどころか実に気味が悪い。

 ただ、二人の主人公の心がここまで歪んでしまった原因が、実は、やたら愛らしく子供っぽくて、人々の愛情を独り占めしてしまう母や、夫に怯えながら、夫の前で甘い声を出したかと思うと、急に声が裏返り、般若のように変身してしまう母との関係性に由来するものだと気づくと、胸に響くところもあるのではないだろうか。

 誰もが共感できるような話ではないけれど、必ずしも目を背けることはできない。

 そんな、心の闇を描いたお話である。

ギンイロノウタ (新潮文庫)

ギンイロノウタ (新潮文庫)