【読書】松岡佳祐『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』

 シャーロック・ホームズ……世界で最も有名な探偵と言っていいだろう。

 そのホームズを作者のコナン・ドイルが、悪の帝王モリアーティと共にライヘンバッハの滝壺の中に突き落とし殺してしまったのが1893年
 読者達の切望に応えてホームズが生還。「空き家の冒険」でライヘンバッハの真相が語られたのが1903年のことである。

 だが、そのホームズが死亡したと考えられていた不在の時期については「チベット等東洋に行っていた」と説明されただけであまり語られていない。

 その謎に秘められた時期にホームズが密かに日本に渡り、歴史的な難事件を解決していたというのがこの話である。

 ロシアのニコライ皇太子が警備中の巡査に切りつけられるという日露戦争にもなりかねない大津事件を題材に、ホームズが日本一有名な政治家・伊藤博文とタッグを組んで解決していく。

 ホームズが要所で見せる、抜群の推理力が小気味よいのは当然だが伊藤博文とホームズの人間関係、ホームズとマイクロフトの兄弟関係の機敏等が織り混ぜられ、さらには公害問題等までが絡まって一層深い話になっている。

 シャーロキアンならずとも充分に楽しめるエンターテイメントストーリーと言えるだろう。