【読書】加藤シゲアキ『傘をもたない蟻たちは』

 NEWS・加藤シゲアキ初の短編集は、とにかく多彩である。

 登場人物は、美大生、サラリーマン、ライター、中学生と、さまざまで、ちょっと独りよがりの主人公が多く感じるが、それも時代の反映なのか。

 今を生きる人々の、生と性、喜びと哀しみ、裏表を、淡々と語ることにより、かえって切なさが伝わってくる。

 サラリーマンの悲哀から、ちょっとおどろおどろしいようなラブストーリー。

 さらに、「イガヌの雨」に至っては、空から摩訶不思議で不気味な、しかし、忘れられないほど甘味な生き物が降ってきて人々の心を鷲掴みにしてしまうというお話。いったいどこからこんな得たいの知れない話を思いつくのだろうか?

 とにかく自由自在に飛び交う、著者の豊かな発想を楽しんで欲しい一冊である。