【読書】西加奈子『サラバ!』

 主人公・歩 ( あゆむ ) がイランのテヘランで産声をあげてから、エジプト、大阪で育ち、小説を書き始めるまでの日々が綴られている。

 エジプトのカイロ育ちの著者による、実体験と思われる生き生きしたエジプト描写に、ぐいぐいと引き込まれた。

 また、そこかしこにちりばめられた軽やかな関西弁が効いている。


 個性的過ぎる家族の中で、気配を消す技術を身につけながら育った人気者の美少年歩が、気がつけばハゲで無職で彼女なしの、ひとりぼっちの34才に。その心の変遷と葛藤が、魅力的な登場人物達との関わりとともに描かれている。

 中でも、少年期に過ごしたカイロで、言葉もわからないのに通じ合えたエジプシャンの少年ヤコブとの友情は印象的。題名にもなっている『サラバ!』は、二人の心の合言葉であり、長い月日を経て再会したふたりを繋ぐ魔法の言葉でもあった。

 アラビア語の「さようなら」を意味する「マッサラーマ」 と「さらば」を組み合わせて歩がいい始めた「マッサラーバ」には、「さようなら」だけでなく「明日も会おう」「元気でな」「約束だぞ」「ゴッドブレスユー」「俺たちはひとつだ」等様々な意味が込められるようになっていった。


 そして、再会の場で『サラバ!』の言葉を交わし合うことにより、長いことさ迷っていた歩は、漸く自分の信じるものを見つけることができた。そして、三年の月日をかけて、ついに自叙伝『サラバ!』を、書き上げたのだった。


サラバ! 上 (小学館文庫)

サラバ! 上 (小学館文庫)

サラバ! 中 (小学館文庫)

サラバ! 中 (小学館文庫)

サラバ! 下 (小学館文庫)

サラバ! 下 (小学館文庫)