科学のカラヴァッジョ派ブログ

ブログのコンセプトは「文学少女が物理学の本を読んだら」です。科学の恋愛至上主義。外見重視。

安部龍太郎『等伯』

 能登・七尾で武士の家に生まれた信春は、長谷川家の養子となり、絵仏師として活躍していたが、どうしても都に出て天下一の絵師になりたい。

 時は、戦国の世。織田信長の時代である。

 この一念を貫く為には、様々な難関を通りぬけなくてはならない。まわりの人々を巻き込み、家族もろとも故郷を追われ、命からがら暮らす日々をおくる。それでも、信春は、業の強さで、ひたすら天下一を目指すのである。

 信春を改め等伯と名乗り、人々に認められるようになるも、心の師・利休の悲劇的な死、ライバルの狩野永徳を中心とする狩野派との対立、事故を装われた息子の死。


 胸を締め付けられるような悲しみが次々と押し寄せる。


 息子の名誉のため、最高権力者となった秀吉に、事故の解明をねがいでたが、取り合うどころか、楯突くとはなにごとかと激怒される。

 文化人の誉れ高き近衛前久のとりなしで、なんとか命はとりとめたものの、秀吉の怒りの矛を収めるためには、等伯がいかに凄い絵師であるかを、示さなくてはならなくなった。

「これまで誰も見たことがない絵を描け。」この難題に応えられなければ、命はない。近衛前久の責任も追及される。

 この命をかけた大一番に、等伯は七尾の松と目に見えぬ霧を描き、見る人々の心をゆさぶった。

「松林図屏風」にて、見事に近衛前久の期待に答えたのである。


等伯 下 (文春文庫)

等伯 下 (文春文庫)

等伯 上 (文春文庫)

等伯 上 (文春文庫)