科学のカラヴァッジョ派ブログ

ブログのコンセプトは「文学少女が物理学の本を読んだら」です。科学の恋愛至上主義。外見重視。

柚木麻子『伊藤くんA to E』

 これは、伊藤君を取り巻くA、B、C、D、E、5人の女性達のお話である。

 美形で博識でボンボン。自意識過剰で幼稚。決定的な局面から逃げ続ける男。どこをどう見ても、しょうもない男・伊藤誠二郎。でも彼は主人公じゃない。

 この男に関わって、こともあろうに片想いして尽くしたり、ストーカーされて嫌悪したり、呆れたり、傷ついたり、傷つけ合ったりする女性達が主人公。

 各々の違う立場からのストーリーが、またこの男の駄目さをあぶりだす。だが、彼女達は、その嫌な部分をみつめることで、彼に呆れるだけじゃなく、鏡のように映る自分達をみつめているのだ。そして、自分を知り、自分を変化させていくのである。
なんと、たくましい!


 三宅隆太いわく、〈女性神話〉とは、社会的に認められるということよりも、自分が自分本来の姿を認めることで、《何か》へと変わる主人公を描く物語だそうで、これも、そんな神話のひとつと言えるだろう。


伊藤くんA to E (幻冬舎文庫)

伊藤くんA to E (幻冬舎文庫)