科学のカラヴァッジョ派ブログ

ブログのコンセプトは「文学少女が物理学の本を読んだら」です。科学の恋愛至上主義。外見重視。

小川洋子『人質の朗読会』

 遺跡観光を終えたマイクロバスが、山岳地帯で反政府ゲリラの襲撃を受け、乗客8人が拉致された。

 廃屋の中で、人質達は生きるために朗読会を始める。

 必要なのは、じっと考えることと、耳を澄ませること。

 しかも、いつになったら解放されるのかという未来ではなくて、未来がどうであろうと決して損なわれない過去の話で。

 誰でも、ひとつぐらいはありそうな、ささやかで、でも忘れられない大事な秘め事を、文字に残し、言葉にすることで、今、生きていることを確認し合っているのだ。

 彼らの姿が目に浮かび、声が聞こえてくる。切ないようで、でも絶望ではない。今日を生きるための言葉達が鮮やかで実に美しい。




7月16日
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