科学のカラヴァッジョ派ブログ

ブログのコンセプトは「文学少女が物理学の本を読んだら」です。科学の恋愛至上主義。外見重視。

トニ・モリスン『青い眼がほしい』

"ここだけの話にしてね"
これは、おとなの話に耳を傾けている子供たちに馴染み深い言葉だ。作り話や、家族や、近所の噂話をしたりするときに黒人女がいつも前置きに使う。

そうやって話がはじめられるとき、これは私たちだけの話で他の人に聞かせることはできないという排他的で秘密めいた響きがある。

語り手の少女は、情報通の大人の真似をして「ここだけの話」を、過去を振り返りながら、季節の花のちょっとした狂いと、しがない黒人少女ピコーラの人格崩壊との繋がりを語り手自身の視点から暴いていく。

1960年代、黒人たちの社会が大きく変動するうねりの中でこの本は書かれた。
しかし、この最初の出版は、ピコーラの人生同様に、とるに足らないと片付けられ、誤解され、認められるまで25年の月日を重ねた。

人種差別のある社会では、その影響は、差別される集団のなかにもあらわれる。そして永遠のようにつづく日々の生活の中で、多くの人を傷つける。

モリスンは、人種差別が人種内におよぼす影響を明快かつ鮮烈にえがいているが、告発や抗議の口調と違い、淡々としていて、ゆるやかでもある。

"世界中の人々が彼女たちに命令する立場にいた。白人の女たちは、「これをやれ」と言った。白人の子供たちは、「あれをくれ」と言った。白人の男たちは、「ここへ来い」と言った。黒人の男たちは、「横になれ」と言った。彼女たちが命令を受けなくてすむのは、黒人の子供たちとお互い同士だけだった。"

青い眼がほしい (ハヤカワepi文庫)

青い眼がほしい (ハヤカワepi文庫)