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科学のカラヴァッジョ派ブログ

ブログのコンセプトは「文学少女が物理学の本を読んだら」です。科学の恋愛至上主義。外見重視。

早見和真『イノセント・デイズ』

ーー「もし自分を必要としてくれる人がいるんだとしたら、もうその人に見捨てられるのが怖いんです」
「それは何年もここで堪え忍ぶことより、死ぬことよりずっと怖いことなんです」
そう繰り返す彼女は、驚くほどキレイだった。

本を読み終わったとき、この言葉が脳裏に強くこだました。

繊細で傷つき易くて優しくて、不器用な生き方しかできない田中幸乃。
彼女をひたすら突き動かしていたものはいったい何だったのだろうか。


元恋人の妻と幼な子を放火殺人した凶悪犯。
不幸な生い立ち、義父からの暴力、中学時代の強盗傷害、それら全ての暗い過去をまとい、いかにもやりそうだよね。と、世間が作り出していった死刑囚の女の姿。

人びとが思い描いた彼女の虚像と、本当の彼女とのあいだの深い溝は、いったいなんなんだったのだろう。


作者は、様々な角度から事実を積み重ね、真相を追い、驚愕の真実に、そして、表れにくい田中幸乃の内面にも、静かにしかし着実に迫っていく。
まさに、これは新しい形のミステリーと言えるだろう。

ーー私は見届けなければいけないのだ。彼女が死ぬために生きようとする姿を、この目に焼きつけなければならなかった。

この切なすぎる言葉が紡ぎ出す真実は、果たしてなんだったのだろうか。

貴方にも、是非読んでもらいたい。
そして、貴方の目にも、彼女のその姿を焼き付けてもらいたいと切に願うばかりです。

イノセント・デイズ (新潮文庫)

イノセント・デイズ (新潮文庫)