科学のカラヴァッジョ派ブログ

ブログのコンセプトは「文学少女が物理学の本を読んだら」です。科学の恋愛至上主義。外見重視。

平野啓一郎『葬送』、叙事詩。

舞台はパリ。

それも、ブルジョア中心の7月王政から、市民革命、第二共和制へと、めまぐるしく移り変わりゆく激動のパリ。


サロンで時代の寵児として愛される天才音楽家ショパンとその愛人ジョルジュ=サンドのロマンスと離別、天才画家ドラクロワとの友情と芸術論、きらびやかで、我々一般人とはかけ離れた世界の、絵空事かと思って読み始めた。


しかし、否。

この本は、そんなありきたりな夢物語を描いている訳ではないのです。


作者平野啓一郎が、4年の月日をかけたという緻密な考証はただものではない。

激動の中で、変わりゆく価値観に抗いながら、自分達の運命に翻弄されていく天才達の心の葛藤、苦悩を丹念に紡ぎあげた珠玉の書といえるでしょう。

才能に恵まれながらも、39才という若さでこの世をさらなければならなかったショパンの哀しみ。
そして、二度と再び踏むことのできなかった故郷ワルシャワの地と母への強い思慕。

親友の死すら正面からうけとめられない自分に、自問自答し続けているドラクロワの苦悩。

これは、まさに繊細でフラジャイルなショパンの調べそのものであり、心の葛藤や苦悩を丁寧に綴った、まさに、魂の叫びの書なのかもしれません。

葬送〈第1部(上)〉 (新潮文庫)

葬送〈第1部(上)〉 (新潮文庫)

葬送〈第1部(下)〉 (新潮文庫)

葬送〈第1部(下)〉 (新潮文庫)

葬送〈第2部(上)〉 (新潮文庫)

葬送〈第2部(上)〉 (新潮文庫)

葬送〈第2部(下)〉 (新潮文庫)

葬送〈第2部(下)〉 (新潮文庫)