【読書】加藤シゲアキ『傘をもたない蟻たちは』

NEWS・加藤シゲアキ初の短編集は、とにかく多彩である。 登場人物は、美大生、サラリーマン、ライター、中学生と、さまざまで、ちょっと独りよがりの主人公が多く感じるが、それも時代の反映なのか。 今を生きる人々の、生と性、喜びと哀しみ、裏表を、淡々…

【読書】原田マハ『モダン』

モダンアートの聖地、ニューヨーク近代美術館・MoMAを舞台に、そこで働く人々の夢や、哀しみ、迷い、決断等を、日常の暮らしに落とし込んで綴られた短編小説集。 自ら、フリーのキュレーターで、カルチャーライターとして活動する原田マハならではのセンスや…

【読書】西加奈子『サラバ!』

主人公・歩 ( あゆむ ) がイランのテヘランで産声をあげてから、エジプト、大阪で育ち、小説を書き始めるまでの日々が綴られている。 エジプトのカイロ育ちの著者による、実体験と思われる生き生きしたエジプト描写に、ぐいぐいと引き込まれた。 また、そこ…

【映画】『イエスマン“YES”は人生のパスワード』( by 兄 )

中年男性のカールは、離婚後全てのことにやる気を無くしていた。 あらゆることに「ノー」と言ってきた。当然、友達からの誘いは全てお断り。人も仕事もカールから離れていった。 ひょんなことから、「イエス」セミナーに参加。全てのことに「イエス」と答え…

【読書】西内啓『統計学が最強の学問である』( by 兄 )

刺激的なタイトルの本だ。 漠然とした統計学への関心から、この本を手にとった方も多いと思う。私もその一人だ。遅ればせながら、読んでみた。 この本は統計学の実際の使い方を教えてくれる本ではなく、統計学活用の心得を伝える本といって良い。 個人的に参…

【読書】阿部和重・伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』

『キャプテンサンダーボルト』は、現代日本文学のトップランナー阿部和重と当代きっての人気作家伊坂幸太郎がタッグを組んで「完全合作」したエンターテイメント小説。 夢の一作といっても過言ではないだろう。思う存分楽しんでいただきたい。 話は、ひょん…

【読書】吉村萬壱『臣女 ( おみおんな ) 』

どうしたことか、夫の浮気を知った時から妻の奈緒美の身体が、日に日に巨大化していく。 高校講師の傍ら、とるに足りない小説を書いていた平凡で小心者の夫は、妻を近所の人たちに気づかれないよう必死に隠しながら、大量の食べ物を買いこみ、大量の汚物の処…

【映画】『ザ・ダイバー』出演 : ロバート・デ・ニーロ、キューバ・グッディング・Jr、シャーリーズ・セロン 監督 : ジョージ・ティルマン・Jr 2000年 アメリカ

1950年代、まだあからさまな人種差別が行われていたアメリカ。ラバで畑を耕す貧しい小作農家の息子カールが、海兵隊のマスターダイバーを目指す。 海軍で黒人が選べるのは三つ。コックか雑用係か除隊と言われていた時代。 百通の申請書を書き、やっとのこと…

【読書】萩尾望都『私の少女マンガ講義』

これは、イタリアナポリ東洋大学で行われた萩尾望都の講義とインタビューをベースに、少女マンガの歴史や魅力、自身の作品について語られたものをまとめた一冊。 幼い頃から、姉が読み終わったマーガレットやセブンティーン等を見せてもらうのが大好きだった…

【読書】柚木麻子『ナイルパーチの女子会』

大手総合商社でバリバリ仕事をこなす栄利子は、最近人気のだらだら主婦ブロガーおひょうさんのブログにはまっている。 たまたま近所に住んでいたふたりは、行きつけの店でバッタリ出会い、意気投合。 性格の違うふたりだが、かえってお互いに惹かれ合い、あ…

【読書】七月隆文『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

奥手で女の子と付き合ったこともない主人公・ぼくが、京阪線で見かけた愛らしい彼女に一目惚れ。 ハードル高過ぎて絶対無理と思いつつも、何かの力に押されるように、必死に声をかけると、なんと彼女がうなずいてくれたのだ。 彼女は携帯を持っていなかった…

清水義範『国語入試問題必勝法』

何を言ってるのかわからない国語の入試問題。意外と多いですよね。 これは、その難しい国語入試問題に苦戦している一郎君と、彼に必勝法を伝授する月坂先生のお話。 月坂先生によれば、本文を読まなくても、単純なルールに当てはめれば問題を解けるという。 …

アーシュラ・K・ル=グウィン『影との戦い ゲド戦記』

絶え間ない嵐にみまわれる東北の海につき出す山。 それこそ、古来より数多くの魔法使いを生んだ地として名だたるゴント島である。 その地で生まれたダニーと呼ばれる少年には、生まれつき並外れた力があり、島が敵国に攻められたとき、なんと不思議な霧を起…

岸見一郎『嫌われる勇気ーーー自己啓発の源流「アドラー」の教え』by 兄

本書はフロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた一冊だ。 アドラー心理学にはいくつかキーワードがある。 ①原因論ではなく、目的論で捉…

アーシュラ・K・ル=グウィン『空飛び猫』

『空飛び猫』 題名の表すとおり、羽のある猫たちのお話です。 猫好きの村上春樹によるアーシュラ・ル=グウィンの童話の翻訳本で、 毛並みの良さそうな四匹の猫たちのお洒落なイラストが目を引きます。 こう聞いただけでも、ちょっとこの本を見たくなりません…

藤崎彩織『ふたご』

これは、SEKAI NO OWARI Saoriさんの衝撃のデビュー小説です。 主人公・夏子は、小学校時代からピアノを友達としてきた音楽少女。 その夏子が、一年先輩の月島君と出会ったのは、中学校の吹き抜けの階段。 その時月島君は、寒空の下の動物みたいな目をして、…

武田猛、藤田康人 他『ヒットを育てる!食品の機能性マーケティング』by 兄

武田猛、藤田康人 他『ヒットを育てる!食品の機能性マーケティング』 皆さんがご存知かは分からないが、食品の機能性を表示することは、法律で禁止されている。 ただし、トクホや機能性表示食品といった制度を利用すれば、限定的に機能性を表示することは可…

池井戸潤『下町ロケット』by 兄

『下町ロケット』 半沢直樹で何かと話題になった池井戸潤さんの本を読んだ。 小型エンジンを生業としている中小企業が、確かな品質と技術、そしてプライドで、大企業に挑んでいく。 完成度の高いロケットエンジンの部品を開発し、それを核としたロケットが宇…

山本兼一『利休にたずねよ』

「似たような小壺であっても、一文の値打ちのない物と高価な物があります。いったい何がちがうのでしょうか」とイエズス会東インド巡察師・ヴァリニァーノが尋ねる。 利休はこう応えた。「それは、わたしが決めることです。わたしが選んだ品に伝説が生まれま…

安部龍太郎『等伯』

能登・七尾で武士の家に生まれた信春は、長谷川家の養子となり、絵仏師として活躍していたが、どうしても都に出て天下一の絵師になりたい。 時は、戦国の世。織田信長の時代である。 この一念を貫く為には、様々な難関を通りぬけなくてはならない。まわりの…

山崎力・小出大介編著『臨床研究いろはにほ』by 兄

食品がヒトに効くかを調べたいと思ったとき、医薬品と同様、ヒトを対象にした臨床研究をする必要がある。 ヒト試験のプランニングにはコツがあり、PECO のフレームに当てはめるとすっきりする。 Patient どんな患者さんに Exposure 何をすると Comparison 何…

澤田瞳子『若冲』

若冲は、京の青物を取り仕切る大店の長男として生まれた。23才で家督を継いだが40才で弟に店を譲り隠居。85才で死ぬまで、絵を描き続けた。 家業を顧みず、絵を書く若冲を、少しでも落ち着けようと、母は三輪を娶らせたが、いっこうに暮らしぶりは変わ…

ビートたけし『アナログ』

「お互いに会いたいと思う気持ちがあれば、絶対に会えますよ。ただピアノに来ればいいんですもの。」 主人公悟がインテリアを手掛けた喫茶店ピアノ。たまたま、そこで出会ったみゆきと名乗る女性と、毎週木曜日夕方、その店でまた会うことだけを約束する。お…

柚木麻子『伊藤くんA to E』

これは、伊藤君を取り巻くA、B、C、D、E、5人の女性達のお話である。 美形で博識でボンボン。自意識過剰で幼稚。決定的な局面から逃げ続ける男。どこをどう見ても、しょうもない男・伊藤誠二郎。でも彼は主人公じゃない。 この男に関わって、こともあろうに…

モーパッサン『女の一生』[訳・永田千奈] ( 光文社古典新訳文庫 )

今回は、名作・モーパッサンの『女の一生』。 あまりに有名すぎて、今さらあれこれ言うのもおこがましいが、主人公ジャンヌの妥協の人生ぶりには、かける言葉が見つからない。わずか3ヶ月のお付き合いで結婚した夫がとんでもない人で、夫と、甘やかした息子…

加藤シゲアキ『Burn.-バーン-』

輝かしい賞を受け、公私ともに絶好調の演出家レイジ。しかし、何故か20年前の記憶がすっぽりとぬけていて思い出せない。 不慮の事故をきっかけに、その記憶が少しずつ蘇り始め、かつての自分が、あぶり出される。 天才子役と騒がれながらも、公園で先輩た…

住野よる『君の膵臓をたべたい』

君の膵臓をたべたい 住野よる 社交的で限りなく明るいクラスメイト・桜良の余命が短いことを、偶然知ってしまった「僕」。 その日から、読書だけが友達の地味な僕が、どういうわけか、「人気者桜良の死ぬ前にやりたいこと」につきあわされる。 一緒にやりたいこと…

村上龍『希望の国のエクソダス』

二十世紀末、バブル破綻のつけを清算できないまま、日本経済が右往左往する中で、この小説は書かれた。 今まで絶対的と思われてきた金融機関、終身雇用、大手一流企業神話…いろんなものが、崩れ始めた時代。今まで当たり前だと思ってきたセオリーが通用しな…

岡敦『強く生きるために読む古典』

強く生きるために読む古典岡 敦 世の中は、鈍感なほど生きやすい気がする。 作者は、高校生の多感な時期に、新左翼運動に関わり、友の死に直面した。 また、両親の破産、離婚を経験し、母とふたり、負債を逃れてたどり着いた飯場生活の中で、厳しいながらも…

小川洋子『人質の朗読会』

遺跡観光を終えたマイクロバスが、山岳地帯で反政府ゲリラの襲撃を受け、乗客8人が拉致された。 廃屋の中で、人質達は生きるために朗読会を始める。 必要なのは、じっと考えることと、耳を澄ませること。 しかも、いつになったら解放されるのかという未来で…