科学のカラヴァッジョ派ブログ

ブログのコンセプトは「文学少女が物理学の本を読んだら」です。科学の恋愛至上主義。外見重視。

【読書】萩尾望都『私の少女マンガ講義』

 これは、イタリアナポリ東洋大学で行われた萩尾望都の講義とインタビューをベースに、少女マンガの歴史や魅力、自身の作品について語られたものをまとめた一冊。

 幼い頃から、姉が読み終わったマーガレットやセブンティーン等を見せてもらうのが大好きだった私としては、興味津々。

 読んで見ると、今まで気づかなかったこと、知らなかったことが満載で、新しい感動のるつぼだった。

 まずは、少女マンガが男性作家達によって生まれたこと。


ーそういわれればそうかも。


 女性に権力や地位がなかった時代に、あるときは男装の麗人として剣をふるい、あるときは王子として国務をこなす王女様は、その時代の中で許される最大級のエールとメッセージを送っていたらしい。


ーなるほど凄い。大好きだったリボンの騎手に、そんな深い意味がこめられていたなんて!
 少女マンガは、当時の虐げられた女性たちを勇気づけ、力づける希望の星だったに違いない。
 

 そして3.11以降の萩尾望都の作品の意味するものにも胸を打たれた。

 とにかく、日本の少女マンガは面白い。そして、限りなく深い。


私の少女マンガ講義

私の少女マンガ講義

【読書】柚木麻子『ナイルパーチの女子会』

 大手総合商社でバリバリ仕事をこなす栄利子は、最近人気のだらだら主婦ブロガーおひょうさんのブログにはまっている。

 たまたま近所に住んでいたふたりは、行きつけの店でバッタリ出会い、意気投合。

 性格の違うふたりだが、かえってお互いに惹かれ合い、あたかも最強の二人になりそうな勢いだった。

 しかし、学生時代から他人との距離感がうまくつかめない栄利子は、おひょうこと翔子にも必要以上に踏み込み過ぎて引かれてしまう。 

 人との繋がりの中で自分の輪郭を確認したいと切に願う栄利子は、歯止めがきかず、もうストーカー状態。

 また、誰かと触れ合って自分の輪郭を確かめたい翔子は、過ちを起こしてしまう。

 執着からの強要、脅迫。

 それからのふたりは何もかもが悪い方へ、悪い方へと堕ちていく。

 軽い女子トークを期待してた私には、あまりにもおどろおどろしくて恐ろしくなるような驚愕の展開だったが、はまる人もいるのかも。

 何しろ第28回山本周五郎賞のみならず、第3回高校生直木賞に輝いた作品です。


ナイルパーチの女子会 (文春文庫)

ナイルパーチの女子会 (文春文庫)

【読書】七月隆文『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

 奥手で女の子と付き合ったこともない主人公・ぼくが、京阪線で見かけた愛らしい彼女に一目惚れ。

 ハードル高過ぎて絶対無理と思いつつも、何かの力に押されるように、必死に声をかけると、なんと彼女がうなずいてくれたのだ。

 彼女は携帯を持っていなかったけれど、ふたりは自己紹介をして、宝ヶ池のまわりを散歩した。


 ぼくは、イラストレーター志望の二十歳。

 彼女は、美容師専門学校に通う二十歳。


 夢のような時間は瞬く間に過ぎた。

 別れ際、「また会える?」と、ぼくはドキドキしながら尋ねると、何故か彼女が泣いてしまった。

 ぽろぽろとすごい勢いで落ちる涙。

 何が起こったのかわからなくて固まっていると、

「ちょっとね……悲しいことが、あってね」と、彼女。

 涙に濡れた瞳がぼくを見つめた。

「また会えるよ」

 急にふたりの距離が近づいて、お互いを大切な人と意識する。


 そこからは、甘酸っぱいような、麗しい青春ラブストーリー。

 と、思いきや、突然、思いもよらない彼女の秘密が明かされる。

 そして、彼女がどうしていつも涙脆かったのかが、ずしんと胸に響いてくるのです。

 数奇な運命と涙の訳は、貴方自身で確かめてみてください。


 ぼくは明日、昨日のきみとデートする


清水義範『国語入試問題必勝法』

 何を言ってるのかわからない国語の入試問題。意外と多いですよね。

 これは、その難しい国語入試問題に苦戦している一郎君と、彼に必勝法を伝授する月坂先生のお話。

 月坂先生によれば、本文を読まなくても、単純なルールに当てはめれば問題を解けるという。

 そのルールというのが、どこまでが冗談で、どこからが本気なのかがわからなくて、実に面白い。

 しかも、それに従った一郎君はめきめき解けるようになり、めでたく合格。

 そして、月坂先生にお礼の手紙を書くのだが、その手紙がまた笑える。

 手紙を読んでも、いったい何を言いたいの伝わらない。

 入試問題は解けるようになったけど、国語力はさっぱりのまま。

 いや、前よりひどくなっているのでは?


国語入試問題必勝法 (講談社文庫)

国語入試問題必勝法 (講談社文庫)

アーシュラ・K・ル=グウィン『影との戦い ゲド戦記』

 絶え間ない嵐にみまわれる東北の海につき出す山。

 それこそ、古来より数多くの魔法使いを生んだ地として名だたるゴント島である。

 その地で生まれたダニーと呼ばれる少年には、生まれつき並外れた力があり、島が敵国に攻められたとき、なんと不思議な霧を起こして村人たちを守ったのである。

 そのことが、遠くまで知れわたったことから、ダニーは、魔法使いの弟子となり、修行をすることになる。

 そして、本当の名前・ゲドを授けられた。

 この世界では、人にも物にも、本当の名前があり、その名前は秘密にされている。

 何故なら、本当の名前がわかると、簡単に魔法をかけられてしまうからである。

 ゲドは、とても優秀で、魔法学校でも、どんどん腕をあげていった。

 しかし、虚栄心と奢りから、あるとき他の学生と力比べをし、決して使ってはいけない魔法に挑んでしまった。

 そのために、ゲドは瀕死の怪我をおうとともに、己の中に潜んでいた悪の影を引き出してしまい、それからはその影に追われることになってしまうのだ。

 そこからは、ゲドと影との闘いの物語である。

 今まで、魔法ものをいくつも読んできたせいか、あれこれのシーンで、どこかで出会った感があったことは否めない。

 でも、もし小中学生のときにこの物語に出会ったていたら、きっと夢中で一気に読み終えたに違いない。

 悪と魔法使いが闘う物語。

 そしてドロドロとした闘いが繰り広げられるなか、魔法学校で親しくなった友人が、ゲドにそっと本当の名前を教えてくれるところがとても素敵な物語。


影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)

影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)

岸見一郎『嫌われる勇気ーーー自己啓発の源流「アドラー」の教え』by 兄

 本書はフロイトユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた一冊だ。

 アドラー心理学にはいくつかキーワードがある。


原因論ではなく、目的論で捉える

 ある原因があるから何かができない(原因論)わけでなく、何かをしたくないという目的があってそのためにできない原因を生み出している(目的論)という解釈。
 過去のトラウマや原因に意味づけを与えるのは、他でもない自分自身。
 あなたが変わらないでいるのは、原因を理由にして、居心地の良い今の自分から変わらないという目的があるから。つまり、変わらないという決心を自分で下しているから。


②すべての悩みは対人関係

 孤独を感じるにも他者を必要とする。個人だけで完結する悩み、いわゆる内面の悩みなどは存在しない。
 これは誰の課題なのか?という視点から、自分の課題と他者の課題とを分離していく必要がある。
 あらゆる対人関係トラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと、あるいは自分の課題に土足で踏み込まれることによって引き起こされる。


③自己受容、他者信頼、他者貢献

 交換不能な「このわたし」をありのまま受け入れる自己受容。
 対人関係の基礎に懐疑を置かず、無条件の信頼を置くべきだとする他者信頼。
 そして、他者に無条件の信頼を寄せて、人々は自分の仲間だと思えているからこそできる他者貢献。


 アドラー心理学では、「幸福とは、貢献感である」と定義している。
 そして、幸福な人生への導きの星は、他者貢献だとも断言している。
 最後に、アドラーの言葉を贈る。

「誰かが始めなければならない。他の人が協力的でないとしても、それはあなたには関係ない。わたしの助言はこうだ。あなたが始めるべきだ。他の人が協力的であるかどうかなど考えることなく。」



嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

アーシュラ・K・ル=グウィン『空飛び猫』

『空飛び猫』

 題名の表すとおり、羽のある猫たちのお話です。
 猫好きの村上春樹によるアーシュラ・ル=グウィンの童話の翻訳本で、
 毛並みの良さそうな四匹の猫たちのお洒落なイラストが目を引きます。

 こう聞いただけでも、ちょっとこの本を見たくなりませんか。

 都会の下町で育ったのらの四兄弟が羽ばたいて、伸びやかな大地に向かい、野生の鳥たちに出合って苦戦しながらも、仲良く成長していくお話です。

 優しい口調で子供たちに語りかけるような文章を是非お楽しみください。

 このお話には、『帰ってきた空飛び猫』と言う素敵な続編もあるそうで、それも、読んでみたいと思っています。


空飛び猫 (講談社文庫)

空飛び猫 (講談社文庫)